年代別の運用シミュレーション
記事の概要
1971年から2019年までの約50年間について、アセットアロケーションによる運用シミュレーションをしてみました。
各年代の世相を反映するグラフになっています。ぜひご自身の資産を運用しているつもりでグラフを見てください。
シミュレーショングラフには、資産ポートフォリオを構成する各単独資産の推移も重ねて折れ線グラフ表記しています。それぞれの資産にどのような特徴があるのか、ご自身で分析してみてください。
グラフの見方、アセットアロケーションの運用条件、運用評価の考え方詳細については、こちらの記事を参考にしてください。
評価はすべて円換算です。米国資産はその時々の為替レートで円に換算されており、ドルベースではないことにご注意ください(円高傾向のときはドル資産のリターンが小さくなり、ドル高傾向の場合はその逆になる)。
myassetの資産配分
年代別シミュレーショングラフにおける"myasset"の資産配分は、シミュレーションの条件をそろえるため、すべて以下で統一しています。
円現金(yen): 25%
米ドル現金(usd): 25%
ダウ・ジョーンズ工業株30種(dwj)/米国株: 12.5%
ナスダック総合指数(nasdaq)/米国株: 12.5%
日経225平均(nh225)/日本株: 25%
※1)このシミュレーションでは、
ドル/円資産の配分を50%/50%、
現金/株の資産配分も50%/50%
にしています。
■2010年台のシミュレーション
シミュレーション期間
2010年1月から2019年12月までの10年間
運用期間中の主な経済イベントの年表はこちら。
リーマンショックからの復活、東日本大震災、アベノミクスなど。
円安ドル高の進行と株高でnasdaqは円建て換算で5倍に。
この期間の直後(2020年2月頃)からコロナショックが始まる。
リターンの評価
myasset: 1.9倍
usd: 1.2倍
nasdaq: 5.0倍
dwj: 3.4倍
nh225: 2.3倍
リスクの評価
myasset: 2015-05-31~2016-06-30の396日間で14.9%下落
usd: 2010-04-30~2012-01-31の641日間で18.8%下落
dwj: 2011-04-30~2011-09-30の153日間で19.2%下落
nasdaq: 2010-04-30~2010-08-31の123日間で22.9%下落
nh225: 2015-07-31~2016-06-30の335日間で24.3%下落
■2000年代のシミュレーション
シミュレーション期間
2000年1月から2009年12月までの10年間
運用期間中の主な経済イベントの年表はこちら。
大きな金融危機が2回到来。
米国資産はリーマンショック発の円高ドル安と株安のダブルパンチ。
日経平均もダメ。
nasdaqはITバブルピーク~リーマンショック底までで75%下落。
株はもうこりごりといいたくなる10年か。
リターンの評価
myasset: 0.81倍
usd: 0.87倍
dwj: 0.82倍
nasdaq: 0.5倍
nh225: 0.54倍
リスクの評価
myasset: 2007-06-30~2009-01-31の581日間で38.1%下落
usd: 2002-01-31~2009-11-30の2860日間で35.8%下落
dwj: 2007-05-31~2009-02-28の639日間で58.4%下落
nasdaq: 2000-02-29~2009-01-31の3259日間で74.3%下落
nh225: 2000-03-31~2009-02-28の3256日間で62.8%下落
■1990年代のシミュレーション
シミュレーション期間
1990年1月から1999年12月までの10年間。
運用期間中の主な経済イベントの年表はこちら。
日本バブル崩壊、阪神淡路大震災、円高、就職氷河期、米国ITバブル発生。
日本は失われた10年。
nasdaqはITバブル。円高ドル安なのに円換算で6.9倍に。
これ、日本は金融政策を間違ってませんかね?
リターンの評価
myasset: 1.23倍
usd: 0.71倍
dwj: 3.14倍
nasdaq: 6.92倍
nh225: 0.51倍
リスクの評価
myasset: 1990-05-31~1995-06-30の1856日間で26.6%下落
usd: 1990-04-30~1995-04-30の1826日間で47.1%下落
dwj: 1990-05-31~1990-10-31の153日間で27.7%下落
nasdaq: 1990-06-30~1990-10-31の123日間で39.1%下落
nh225: 1990-01-31~1998-09-30の3164日間で64.0%下落
■1980年代のシミュレーション
シミュレーション期間
1980年1月から1989年12月までの10年間。
運用期間中の主な経済イベントの年表はこちら。
1987年ブラックマンデー。
リターンの評価
myasset: 1.69倍
usd: 0.6倍
dwj: 1.89倍
nasdaq: 1.69倍
nh225: 5.75倍
リスクの評価
myasset: 1987-09-30~1987-12-31の92日間で18.5%下落
usd: 1982-10-31~1987-12-31の1887日間で56.2%下落
dwj: 1987-07-31~1987-12-31の153日間で39.0%下落
nasdaq: 1983-06-30~1987-12-31の1645日間で47.5%下落
nh225: 1987-08-31~1987-12-31の122日間で17.2%下落
■1970年代のシミュレーション
シミュレーション期間
1971年2月から1979年12月までの9年弱。
運用期間中の主な経済イベントの年表はこちら。
第一次、第二次オイルショック。
当時戦後最長のいざなぎ景気終わるも、日本の経済成長は力強く続いていた。
リターンの評価
myasset: 1.17倍
usd: 0.67倍
dwj: 0.64倍
nasdaq: 1.0倍
nh225: 2.94倍
リスクの評価
myasset: 1973-01-31~1978-10-31の2099日間で22.0%下落
usd: 1971-02-28~1978-10-31の2802日間で49.8%下落
dwj: 1971-04-30~1978-10-31の2741日間で57.7%下落
nasdaq: 1972-05-31~1974-09-30の852日間で58.9%下落
nh225: 1973-01-31~1974-10-31の638日間で33.6%下落
■約50年間まとめてドン
シミュレーション期間
1971年2月から2019年12月までの49年弱。
運用期間中の主な経済イベントの年表はこちら。
1980年代までは米国と比べて日本経済の成長力が強かったが、1990年代にバブルがはじけて失速し、米国資産優位に。2010年台も米国資産優位の傾向が続いている。
myassetの49年間運用を総括してみる
リスク資産50%のmyassetは、49年で3.66倍。
福利の年利回りで表すと2.6%程度と微妙な数字になりました。
配当収入は計算に入ってない(ただし、配分リバランスのための売買手数料や譲渡益税の支出も入ってない)ので、実際にはもう少し良くなるような気がします。
(福利の場合はこれが大きなリターンの差になります。。。)
myassetのポートフォリオは金融危機に対し、一定の耐性があることを示してくれたと考えています。
例えば10年の間に2度の大きな金融危機が訪れた2010年台。日経平均やnasdaqの資産価値が半減するなかで、myassetの損失は20%弱に収まっています。この間、ITバブルで大儲けした人もそうでない人も、リスク管理が十分でなかった人の多くは強制退場になったことでしょう。
ちなみに、myassetが最もダメージを受けた経済イベントはリーマンショックでした。最大の下落期間を抽出すると、2007年6月~2009年1月にかけての19か月で38.1%下落しています。
構成資産別のパフォーマンスを見てみると、もっともハイリターンの資産は米国新興市場のnasdaq指数でした。円換算で約27倍になりました。これを福利の利回りで表すと50年近くにわたって年平均6.96%と非常に良いパフォーマンスでした。
ただし、nasdaqは値動きも激しく、ITバブルピーク~リーマンショック底にかけての2000年2月から2009年1月の9年間で74.3%も下落しています。
年代別シミュレーションをみると、1970年台~1980年代は日本資産、1990年台以降は米国資産に多く配分できていれば運用利回りはずいぶんよくなります。また、危機の際に早めにリスク資産の配分を減らすことができた場合も同様のことが言えそうです。
アセットアロケーションではリスクコントロールのため、むやみに配分を変えるべきではないと考えています。しかしながら、
・長期的な経済情勢の見直し
・経済危機回避
による配分見直しがリターンに大きく影響することもまた事実です。
さて、この記事を書いている2020年4月現在、世の中はコロナ一色です。
今後はコロナショックの影響で世界の勢力図が変わるのか?
それとも日本は少子高齢化の進展でこの傾向が続くのか?
リスク資産の配分はどの程度にしようか?
それを考えるのはご自身です。
よく考えて資産配分を決めましょう。
おまけ
この記事でシミュレーションしてきたmyassetは、国内通貨(円)25%、外貨(ドル)25%、国内株式25%、外国(米国)株式25%で構成されています。
この資産配分、何かに似てませんか。
答えは、公的年金積立金の資産配分(2020年4月現在)です。
公的年金積立金は、通貨の代わりに国債で運用していること、外貨資産は米国だけでなく、他の国の外貨資産も組み入れていること、外国資産については為替ヘッジをしている点などで異なりますが、リスク資産である株式の割合が50%なので、おおむね似たような資産推移になるでしょう。
公的年金はもともと国債などの安全資産メインで運用されてきたのですが、2006年以降、段階的に株式の割合を増やしはじめ、今に至っています。
公的年金資産の時価総額は、2018年度末時点で約160兆円とのことです。
これだけの資産で運用されていますので、私は株価が下がったときに、、
「〇兆円の年金資産が泡と消えた!」
みたいな、時価総額の下落額だけ示し、あたかも巨額の金額が失われたかのようなタイトルの記事は煽動記事だと思います。
しかし、50%のリスク資産への配分が多すぎるかどうかについては意見がわかれるところではないでしょうか。
みなさんはこのブログの年代別のシミュレーションをみて、今の公的年金のポートフォリオについてどう感じますか?