個人投資家の資産運用メモ帳 -お金に働いてもらうために

趣味のプログラミングで集めた過去の株価履歴データを使い、投資/資産運用手法について検証してみます。

GDPと株価の長期推移の比較

 資本主義経済では、名目GDP(物価を考慮しない金額ベースのGDP)が常に成長しつづけなければ経済がうまく回っていきません。

 少し乱暴に説明すると、資本主義経済では、お金は誰かの借金によって新しく生み出されます(これを信用創造といいます)。そしてその借金には利子をつけて返さないと金融機関がお金を回せなくなるからです。これは資本主義経済の構造そのものなのです。

 名目GDPが成長すると、実体経済成長のエンジンである企業の売り上げも増えるため、株価はGDPの成長に長期的に連動すると思われます。

 そこで、この記事では、日米の名目GDP成長の推移と、その国を代表する株価指数の推移を比べて、経済成長と株価の関係についてみてみたいと思います。

 また、株価の成長がその国の名目GDPの成長率に連動するという仮定にたつと、名目GDPの成長が期待できる国の株に投資することが有利であると考えられます。ただし、いくら名目GDPが成長したとしても、その国の通貨が安くなってしまっては元も子もありません。例えば、ある国の名目GDPが2倍になったとしても、その国の通貨が円換算で半値になってしまえば円評価ではまったく成長していないことになります。

 そこで、この記事の最後に1980年-2019年の40年における日米の名目GDP成長率の比較グラフを掲載しました。為替の影響を織り込むために、米国のGDP成長率をそのときそのときの為替レートで円換算で補正したグラフも掲載しています。

米国名目GDPとSP500の長期推移

 下のグラフは1930年-2019年までの90年間の米国GDPとスタンダードプアーズ500株価指数(以下、SP500)を、開始時を1としてそれぞれの成長の推移をグラフにプロットしたものです。

 緑の線が米国名目GDP、青の線がSP500の成長推移を表しています。

 グラフは金額ベースの比較である通常目盛のグラフと、利回りベースの比較である常用対数グラフの2種類を掲載します。

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米国名目GDPとSP500の推移(1930-2019)

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米国GDPとSP500(1930-2019)の常用対数グラフ

米国経済は長期にわたって成長し続けている

 2019年の米国名目GDPは、1930年以降の90年間で204倍(年利回り6.09%)、SP500指数は153倍(年利回り5.75%)になりました。GDPの成長が株価指数の成長と比較すると安定的に成長していることがわかると思います。

 

日本名目GDPと日経225平均の推移

 日本のGDPの統計が1980年からしかとれなかったので、1980年のGDPを1として、日経平均の株価推移と重ねてみました。

 青の線が日経225平均、緑の線が日本の名目GDPを表しています。米国同様、通常グラフと常用対数グラフの2種類を掲載しています。

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日本GDPと日経225(1980-2019)

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日本GDPと日経225の常用対数グラフ(1980-2019)

日本のバブルの爪痕

 シミュレーションを開始した1980年というと、ちょうど日本でバブルがふくらみはじめた時期と重なります。ここから1990年までかけて株価の成長率が名目GDPの成長率を大きく上回っています。バブルが膨らんでいる状態といえるでしょう。

 バブルがはじけた後、1990年代の半ばごろから日本の名目GDPの成長率は横ばいになってしまいました。

 

 

株価の推移は長期的には名目GDPに連動する?

 米国のグラフを見てみると、長期では名目GDPの成長率は株価の成長率よりも高い、株価の動きは名目GDPの成長と比較すると短期的変動が大きい、はありますが、株価の成長は長期的にはGDPの成長に連動しているともいえそうです。常用対数のグラフを見ると、長期的な名目GDPの成長率と株価の利回りに強い相関があることが明確に見て取れると思います。

 日本のグラフを見てみると、データを取得できた期間が米国よりも短く、バブル前後の異常な株価の動きがあって、名目GDPと株価の連動性はわかりづらくなっています。ただ、株価の成長がGDPの成長を極端に上回る期間が長くなった後で株価が暴落。その後株価はGDPの上下を行ったり来たりしており、こちらも長期的に名目GDPの成長率と株価の利回りに相関があるといえそうです。

名目GDP成長率が株価の成長を上回ることが健全?

米国のグラフをみると、長期的には

 名目GDPの成長率>株価の成長率

となっています。

 株価の成長がGDPの成長を上回る状態というのは、実体を伴っていないということなのでしょうか。この大小関係が逆転する状態が長く続き、乖離が蓄積してくると、それはバブル崩壊という形で大きな調整(というか暴落)を引き起こしているように思います。

リーマンショック後、経済成長分の多くは企業に配分された?

 リーマンショックはおそらく世界大恐慌以来の金融危機であったと考えられます。このとき、米国では4兆ドルにせまる空前の資金供給と金融緩和策がとられ、力づくでショックを終息させました。

 その後、リーマンショックからの回復が始まった2009年3月頃から2019年までの約10年の長期にわたり、またしても株価の成長率が名目GDPの成長率を上回っている状況となっています(グラフの傾きを見る)。

 この傾向は、新たなバブルを生み出す土台になっている可能性がありますが、私はもう1つ重要な転換があったと考えています。

 それは、金融経済(資産の総量)に対する生産性の成長率が鈍化し、資本主義を維持するために、低金利策と国債の発行(=国の事業)で強引に経済成長(名目GDPの成長)を確保せざるを得ない状況となっていることです。名目GDPの成長分は低金利政策と国債の発行(=国の事業)により、企業へのみと配分され、結果として名目GDPの成長率と株価の推移がほぼ同じ(むしろ株価の利回りの方が高い)になっているのではないでしょうか。裏を返せば実体経済での私たちの労働の対価はほとんど横ばいの状態が続いているように感じています。

 

 

日米の名目GDP成長率の比較

 株価の利回りがGDPの成長率(国の経済成長)に連動するという仮定に立つならば、より経済成長する国の株を買った方が有利です。そこで、日米のGDP成長の傾向を見てみます。

 下のグラフは1980年から2019年までの40年間における日米のGDP成長率の比較です。青が米国、緑が日本であり、米国はドルベース、日本は円ベースです。

 自国通貨に対する両国の名目GDPの成長率の差は歴然ですね。

 ただし、ドルはシミュレーション開始日である1980年末時点から2019年末現在の間に、202円から108円前後と半値近くまで下落しています。

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日米名目GDP成長率の比較(1980-2019)

 そこで、米国GDPをそのときどきの為替レートで補正し、通貨を円にそろえて比較してみました。円評価の米国GDP成長率の変動が大きくなっているのは為替の影響です。 

 円評価で見ても、1990年代半ば以降は、米国成長率の方が高い傾向が続いていることがわかります。

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日米名目GDP成長率を円で比較(1980-2019)

 

 同1980年-2019年末までの日経225平均とスタンダード・プアーズ500(SP500)の「円ベース」の株価推移の比較のグラフも掲載しておきます。

 GDP成長率の推移同様、1990年半ば以降、SP500が日経平均のリターンを大きく上回っています。

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日経平均とSP500の円ベースのリターン推移比較(1980-2019)

 

 

 

コロナショック

 そして2020年2月、コロナショックが世界を襲いました。株価は一時的に大きく下落しましたが、今は一部回復しています(2020年5月現在)。

 世界の経済活動が停止してしまったため、2020年のGDPは大きなマイナス成長となる可能性があります。この先株価が順調に回復するかどうかは、今の経済活動の停滞が金融危機を引き起こすかどうかで決まると考えています。

 私としては事態をあまり楽観していません。ショック発生後の暴落から株価が一部回復しているとは言え、実体経済が完全に回復するのは1年以上先だと考えています。さらに、今の実体経済活動の停滞が、この先金融危機に発展し、大きく株価が下落する可能性も十分あると考えています。

 しかし、今時点では米国株インデックス指数に連動する投信を資産の一部として保有しようという考えに変わりはありません。