個人投資家の資産運用メモ帳 -お金に働いてもらうために

趣味のプログラミングで集めた過去の株価履歴データを使い、投資/資産運用手法について検証してみます。

米国同時多発テロ(2001年9月11日)

概要

 2001年9月11日に米国で発生したイスラム過激派組織アルカイーダによる同時多発テロ。この日、米国で4機の飛行機がほぼ同時にハイジャックされた。うち2機はワールドトレードセンターツインタワーの北棟、南棟に激突。ビルは崩壊して3000人近い犠牲者を出した。崩壊の様子は衝撃的な映像として世界中に配信された。

 ワールドトレードセンターには多くの金融機関が入っていたため、NY証券取引所は9月17日まで閉鎖された。

株価の動き

 スタンダード・プアーズ500は9月17日に再開後、9月21日に底をうつまで11.6%下落。その後、回復し、事件発生1か月後の10月11日に事件発生前の株価に回復した。

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米国同時多発テロ(2011年9月11日)

 

湾岸戦争(1990年8月2日-1991年2月28日)

概要

 石油価格が低迷する中でイラン・イラク戦争の対外債務に苦しむイラクが1990年8月2日、石油の生産量調整に応じない隣国クウェートへ侵攻。

 米国は同盟国から多国籍軍を募り、1991年1月17日よりイラクへの空爆を開始。その後砂漠の嵐作戦とよばれる地上戦を経て1991年2月28日に戦闘を終結させた。

株価の動き

 スタンダードプアーズ500はイラククウェート侵攻開始から71日後の最安値までの間で16.9%下落。株価がクウェート侵攻開始前の水準に戻ったのは約半年後であった。因果関係は不明であるが、多国籍軍優勢、短期収束が予想されており、多国籍軍による空爆開始直前あたりから戻り基調を強めた。

 下のグラフはイラク侵攻が始まってから株価が回復するまでの期間、自国通貨ベースの株価推移をグラフ化したもの。

 日経平均バブル崩壊中の期間であり、株価がさえないのはバブル調整も原因であると思われる。

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湾岸戦争(1990年8月2日-1991年2月28日)

 

 

 

ブラックマンデー(1987年10月19日)

概要

 1987年10月19日月曜日にニューヨーク株式市場で発生した当時過去最大の暴落のこと。ダウ工業株30種、スタンダードプアーズは終値前日比で約20%も下落した。

 なぜブラックマンデーが起きたのか調べてみたが、私にはよく理解できなかった。

株価の動き

 スタンダードプアーズ500は月曜日の暴落も含めて3回の底があったが、どの底も暴落が発生した10月19日の株価を大きく下回ることはなかった。最安値は暴落発生46日後の1987年12月4日で、暴落前と比較して約21%の下落であった。株価が暴落前の水準に戻ったのはほぼ1年後であった。

 バブル真っ盛りの日経225平均は、底までの下落率こそスタンダードプアーズ同様20%程度下がったが、半年後には暴落前の水準に戻している。

 下のグラフはブラックマンデー時の自国通貨ベースの株価推移をグラフ化したもの。

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ブラックマンデー(1987-10-19)



 

 

GDPと株価の長期推移の比較

 資本主義経済では、名目GDP(物価を考慮しない金額ベースのGDP)が常に成長しつづけなければ経済がうまく回っていきません。

 少し乱暴に説明すると、資本主義経済では、お金は誰かの借金によって新しく生み出されます(これを信用創造といいます)。そしてその借金には利子をつけて返さないと金融機関がお金を回せなくなるからです。これは資本主義経済の構造そのものなのです。

 名目GDPが成長すると、実体経済成長のエンジンである企業の売り上げも増えるため、株価はGDPの成長に長期的に連動すると思われます。

 そこで、この記事では、日米の名目GDP成長の推移と、その国を代表する株価指数の推移を比べて、経済成長と株価の関係についてみてみたいと思います。

 また、株価の成長がその国の名目GDPの成長率に連動するという仮定にたつと、名目GDPの成長が期待できる国の株に投資することが有利であると考えられます。ただし、いくら名目GDPが成長したとしても、その国の通貨が安くなってしまっては元も子もありません。例えば、ある国の名目GDPが2倍になったとしても、その国の通貨が円換算で半値になってしまえば円評価ではまったく成長していないことになります。

 そこで、この記事の最後に1980年-2019年の40年における日米の名目GDP成長率の比較グラフを掲載しました。為替の影響を織り込むために、米国のGDP成長率をそのときそのときの為替レートで円換算で補正したグラフも掲載しています。

米国名目GDPとSP500の長期推移

 下のグラフは1930年-2019年までの90年間の米国GDPとスタンダードプアーズ500株価指数(以下、SP500)を、開始時を1としてそれぞれの成長の推移をグラフにプロットしたものです。

 緑の線が米国名目GDP、青の線がSP500の成長推移を表しています。

 グラフは金額ベースの比較である通常目盛のグラフと、利回りベースの比較である常用対数グラフの2種類を掲載します。

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米国名目GDPとSP500の推移(1930-2019)

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米国GDPとSP500(1930-2019)の常用対数グラフ

米国経済は長期にわたって成長し続けている

 2019年の米国名目GDPは、1930年以降の90年間で204倍(年利回り6.09%)、SP500指数は153倍(年利回り5.75%)になりました。GDPの成長が株価指数の成長と比較すると安定的に成長していることがわかると思います。

 

日本名目GDPと日経225平均の推移

 日本のGDPの統計が1980年からしかとれなかったので、1980年のGDPを1として、日経平均の株価推移と重ねてみました。

 青の線が日経225平均、緑の線が日本の名目GDPを表しています。米国同様、通常グラフと常用対数グラフの2種類を掲載しています。

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日本GDPと日経225(1980-2019)

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日本GDPと日経225の常用対数グラフ(1980-2019)

日本のバブルの爪痕

 シミュレーションを開始した1980年というと、ちょうど日本でバブルがふくらみはじめた時期と重なります。ここから1990年までかけて株価の成長率が名目GDPの成長率を大きく上回っています。バブルが膨らんでいる状態といえるでしょう。

 バブルがはじけた後、1990年代の半ばごろから日本の名目GDPの成長率は横ばいになってしまいました。

 

 

株価の推移は長期的には名目GDPに連動する?

 米国のグラフを見てみると、長期では名目GDPの成長率は株価の成長率よりも高い、株価の動きは名目GDPの成長と比較すると短期的変動が大きい、はありますが、株価の成長は長期的にはGDPの成長に連動しているともいえそうです。常用対数のグラフを見ると、長期的な名目GDPの成長率と株価の利回りに強い相関があることが明確に見て取れると思います。

 日本のグラフを見てみると、データを取得できた期間が米国よりも短く、バブル前後の異常な株価の動きがあって、名目GDPと株価の連動性はわかりづらくなっています。ただ、株価の成長がGDPの成長を極端に上回る期間が長くなった後で株価が暴落。その後株価はGDPの上下を行ったり来たりしており、こちらも長期的に名目GDPの成長率と株価の利回りに相関があるといえそうです。

名目GDP成長率が株価の成長を上回ることが健全?

米国のグラフをみると、長期的には

 名目GDPの成長率>株価の成長率

となっています。

 株価の成長がGDPの成長を上回る状態というのは、実体を伴っていないということなのでしょうか。この大小関係が逆転する状態が長く続き、乖離が蓄積してくると、それはバブル崩壊という形で大きな調整(というか暴落)を引き起こしているように思います。

リーマンショック後、経済成長分の多くは企業に配分された?

 リーマンショックはおそらく世界大恐慌以来の金融危機であったと考えられます。このとき、米国では4兆ドルにせまる空前の資金供給と金融緩和策がとられ、力づくでショックを終息させました。

 その後、リーマンショックからの回復が始まった2009年3月頃から2019年までの約10年の長期にわたり、またしても株価の成長率が名目GDPの成長率を上回っている状況となっています(グラフの傾きを見る)。

 この傾向は、新たなバブルを生み出す土台になっている可能性がありますが、私はもう1つ重要な転換があったと考えています。

 それは、金融経済(資産の総量)に対する生産性の成長率が鈍化し、資本主義を維持するために、低金利策と国債の発行(=国の事業)で強引に経済成長(名目GDPの成長)を確保せざるを得ない状況となっていることです。名目GDPの成長分は低金利政策と国債の発行(=国の事業)により、企業へのみと配分され、結果として名目GDPの成長率と株価の推移がほぼ同じ(むしろ株価の利回りの方が高い)になっているのではないでしょうか。裏を返せば実体経済での私たちの労働の対価はほとんど横ばいの状態が続いているように感じています。

 

 

日米の名目GDP成長率の比較

 株価の利回りがGDPの成長率(国の経済成長)に連動するという仮定に立つならば、より経済成長する国の株を買った方が有利です。そこで、日米のGDP成長の傾向を見てみます。

 下のグラフは1980年から2019年までの40年間における日米のGDP成長率の比較です。青が米国、緑が日本であり、米国はドルベース、日本は円ベースです。

 自国通貨に対する両国の名目GDPの成長率の差は歴然ですね。

 ただし、ドルはシミュレーション開始日である1980年末時点から2019年末現在の間に、202円から108円前後と半値近くまで下落しています。

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日米名目GDP成長率の比較(1980-2019)

 そこで、米国GDPをそのときどきの為替レートで補正し、通貨を円にそろえて比較してみました。円評価の米国GDP成長率の変動が大きくなっているのは為替の影響です。 

 円評価で見ても、1990年代半ば以降は、米国成長率の方が高い傾向が続いていることがわかります。

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日米名目GDP成長率を円で比較(1980-2019)

 

 同1980年-2019年末までの日経225平均とスタンダード・プアーズ500(SP500)の「円ベース」の株価推移の比較のグラフも掲載しておきます。

 GDP成長率の推移同様、1990年半ば以降、SP500が日経平均のリターンを大きく上回っています。

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日経平均とSP500の円ベースのリターン推移比較(1980-2019)

 

 

 

コロナショック

 そして2020年2月、コロナショックが世界を襲いました。株価は一時的に大きく下落しましたが、今は一部回復しています(2020年5月現在)。

 世界の経済活動が停止してしまったため、2020年のGDPは大きなマイナス成長となる可能性があります。この先株価が順調に回復するかどうかは、今の経済活動の停滞が金融危機を引き起こすかどうかで決まると考えています。

 私としては事態をあまり楽観していません。ショック発生後の暴落から株価が一部回復しているとは言え、実体経済が完全に回復するのは1年以上先だと考えています。さらに、今の実体経済活動の停滞が、この先金融危機に発展し、大きく株価が下落する可能性も十分あると考えています。

 しかし、今時点では米国株インデックス指数に連動する投信を資産の一部として保有しようという考えに変わりはありません。

 

 

 

 

 

 

 

資産と資産の種類

資産とは

 資産とは、お金に換算できる財産のことをいいます。お金そのものである現預貯金ももちろん資産です。

資産の種類

 資産にはいろいろな種類があります。

 具体的には、現預貯金、保険、株、債券、REIT投資信託等有価証券、棚卸資産(販売商品や原材料など)、現物不動産(土地/建物など)、有形固定資産(機械設備)、無形固定資産(ソフトウェアや特許権など)などです。

 このうち、個人資産運用の主な対象になるのは現預貯金、保険、株、債券、REIT投資信託、現物不動産などになります。

 このブログは「お金に働いてもらう」がテーマでもあるので、ブログで取り上げる資産は「増やすために買って保有するだけ」の資産である、株、REIT、債券、商品(金やプラチナ、石油など)、投資信託を対象とします。

 

 企業の株を1株保有するというのは、その企業の1口オーナーになることを意味します。会社があげた利益の一部は、配当金の形で株主に還元されます。配当金は株主の持ち株数に応じて支払われます。

 企業がうまくビジネスを成長させると利益も大きくなり、もらえる配当金の額は増えていきます。

 配当金は不動産でいうところの家賃収入に相当します。不動産と異なるのは会社の規模そのものが成長することであり、良い企業に投資をすると、投資先企業の成長とともにもらえる配当金が増えていきます。もらえる配当金が増えていくと株価が上昇します。実際には配当金が増えるよりも株価の上昇が先のことの方が多いですが・・。

 それはともかく、企業が成長していくというのは不動産でいうと建物そのものが勝手に大きくなっていくイメージであり、買った器そのものの成長にも期待できるところが株式投資の大きな特徴になっています。

 いろいろな資産の中で、長期的に最もパフォーマンスが良いのは株です。資本主義社会では企業成長が社会全体の経済成長をけん引しており、社会全体の経済成長が株資産に集まっていく構図となっているからです。

 もちろん、個々の企業の経営状況は悲喜こもごもであり、すべての企業が成長できるということではありません。あくまで経済全体での話となります。株式インデックス指数に連動する投資信託ETFへの投資は、全体の株に投資するということでもあります。株全体としては長期的に最もパフォーマンスが良いので、株式インデックス指数に連動する投資信託ETFへの投資は、長期的な資産運用における着実な運用手段の1つであるともいえます。

 しかし、気を付けるべき点もあります。株の短期価格変動は、企業の長期的な成長速度に対して「とても」大きいため、短期間で資産価値を下げることがあります。したがって、株は短期の資産運用には向きません(短期売買で利益を上げること自体が目的の場合は別)。また、運用資産のすべてを株に配分することもおすすめしません。

 最後に、、、

 日本の代表的株価指数である日経225平均は、1989年12月にバブルのピークで最高値38,957円を記録しました。それから30年以上が経過した2020年5月現在(20,000円前後)においてもこの記録を更新していません。1989年12月の価格は実体からかけ離れた異常値であったとしても、バブル崩壊後の日本経済の低調ぶりをあらわしてると思います。

 その後、2008年10月にリーマンショックの影響でバブル後最安値の6,995円を記録。日経平均もそこから見れば大きく回復しましたが、米国株の成長力には遠く及びません。日本の少子高齢化の進展や両国の経済成長の勢いなどを踏まえると、米国経済優位の状況は当面かわらないと考えられるので、資産の一部は米国株にも振り向けるべきと考えます。

 

REIT

 REITとは、不動産投資信託のことです。株同様、REITを1口保有するということは、REIT保有する不動産の1口オーナーになることを意味します。不動産とは具体的には、オフィスビルや商業施設、ホテル、住宅などのことです。

 REITは、不動産投資法人が投資家から集めた資金で不動産に投資します。投資家は不動産投資法人が発行する証券を1口単位で購入することでREITに投資します。

 発行された証券は市場で取引され、賃料収入から運用コストを差し引いた残りが投資家に分配金として配当されます。仕組は株とよく似ています。市場で取引されてますので証券1口あたりの価格は株同様日々市場価格で変動します。

 REIT個別銘柄の分配金利回りは信頼度や人気によっても変わり、人気のもので年3%強、一般的に4~6%前後が目安かなと思います。利回りが低い場合は信頼が高いことを意味しますが、一方で価格が高すぎるという可能性もあります。不動産と同じで分配金収入のために投資をする側面が強いので、分配金利回りの妥当性はチェックすべきかと思います。

 株との違いは、保有する個々の不動産の器が株のように成長するわけではないことと、一般的には株よりも配当利回りが良いことです。不動産価格が上昇する局面では証券価格も上昇します。

 REITは株よりもリスクが低いという人もいますが、過去に発生した金融危機では必ずしもそうともいえないことや、長期的に保有不動産の収益力が低下するリスクもあるので、一概にリスクが低いとも言い切れないかなと思います。しかし、経済環境が安定しているときは安定的に配当収入が見込めますので、自分年金のような資産運用をしたい方には向いている資産ではないでしょうか。

 最後に、、、

 この記事を書いている2020年5月現在、コロナ渦の影響で経済が低迷し、保有物件のテナントの倒産件数増→賃料収入の減少→分配金の減少という懸念があること、テレワークが進んでオフィス需要が減るのではないかという見通しもあること、から、なかなか手を出しづらい状況だと思っています。

 個人的には好きな資産なのでいつの日かまた投資しようとは考えています。

 

債券

 債権とは、国や地方自治体、企業が資金を借りるために発行する有価証券です。発行時に元本が返済される日と、元本が返済されるまでの間支払われる利子を確定し、1口単位で売り出されます。発行後は1口単位で市場取引されますので、満期をまたずに売ったり、市場から買ったりできます。

 株やREITとの違いは、「元本の返済が約束」されていることであり、発行体が債務不履行を起こさない限り満期まで利子を受け取り、満期で元本を受け取ることができることです(満期で元利一括返済するゼロクーポン債というのもあるが、詳細は省略)。

 市場金利は経済状況で変動します。これに合わせて市場で売買される債券の価格も変動します。市場金利が高くなると債券価格が下がることで債券利率を高くし、市場金利に同調する値動きをします。逆に市場金利が低くなると債券価格が上昇し、債券利率を下げる値動きをします。

 したがって、満期前に売買すると元本割れすることもありますが、その値動きは株やREITと比べると限定的になる、というのが特徴です。

 元本返済が「約束」された証券なので、現金同様、「安全資産」とよぶことがあります。ただし、リスクがないということではありません。発行体が債務不履行を起こすと元本は全額は返ってきません(ひどいときは返ってこない)。また、債務不履行のリスクが顕在化したときは債券価格が暴落します。このため、信用が高いほど利率は低くなり(債券価格は高くなり)、信用が低いと利率は高くなり(債券価格は低くなり)ます。

 2020年5月現在、コロナ渦により、世界中で金融緩和(金利は下がる)政策をとっています。円、ドル、ユーロなどの主要通貨の国債利回りはとても低くなっていて、預貯金の利回りとあまり変わらない状況となっています。巨額の資産を運用する機関投資家や金融機関向け商品という側面もあり、このブログでは先進国の国債は現金同様の扱いとしたいと思います。

 また、債券には、ジャンク債(クズ、がらくた)というすごい呼び方をされる債券があります。格付けが低く、債務不履行の可能性が高い暴落債券のことです。これらの債権は元本が返済されると非常に高い利回りを得ることができますが、債務不履行になると元本は返ってきません。私自身あまりこの道に詳しくないので、このブログでの取り扱いは当面は差し控えるつもりです。

現預貯金

 現預貯金が何であるかについての説明は省略します。

 現預貯金は、元本が保証され、信用度も非常に高い資産であることから「安全資産」とよばれます。

 安全の代償として、皆さんもご存じのとおり、ほとんどリターン(利子)はありません。社会全体の経済成長と比較すると、リターンが非常に小さい資産です。

 長期で運用する資産において預貯金は、リスクコントロールのためのバッファとして、または金融危機時におけるリスク資産の逃げ先としての役割となります。

 現預貯金は元本が保証されていますが、モノ不足などでインフレが進む場合、相対的に価値が失われていきます。また、目には見えづらいですが、経済成長で社会全体の資産価値が増えている場合、一定額の現預貯金は相対的に全資産に占める割合が小さくなっています。言葉を変えると、現金のみで資産運用している場合、株などの資産で運用している人よりも相対的に貧乏になっています。

 

商品(コモディティ)

 金融商品として市場で取引できる「商品」というのは具体的には金、プラチナ、銅、石油をはじめとする資源や、大豆、とうもろこし、肉をはじめとする食物などです。商品は純粋に取引時価がすべてであり、株やREIT、債券のような配当はありませんし、株のように成長することもありません。

 商品はインフレになると値段が高騰しますので、長期投資ではインフレの備えとして資産防衛目的で配分します。また、インフレ防衛目的で資産配分する場合は金やプラチナなどの貴金属への投資がメインとなります。

 さて、金やプラチナは現物を保有することもできますが、石油にはどうやって投資をするのでしょうか。

 商品には、「先物取引」という将来の取引価格を約束した金融商品があります。例えば、将来の●月x日に「石油1バレル〇円で買う」という約束を証券化したものです。この約束は証券化され、市場で売買されます。将来の約束である〇円の部分は、先物価格と呼ばれ、今現在の商品の相場価格に応じて日々変動します。つまり、先物価格は商品の相場価格に連動します。石油は、石油の先物価格に連動した投資信託ETFを購入することで投資することができます。

 

投資信託(ファンド)

 投資信託というのは、資産の福袋のようなものであり、投資家が投資信託証券を1口購入すると、資産福袋の1口オーナーになることを意味します。

 いろいろな種類があるのですが、ここでは株や債券、REITなど、資産価値が市場価格からすぐに計算できる証券のみで構成されており、かつ、いつでも売買できる投資信託(オープン型投資信託という)を使って説明します。

 投資信託の運用会社は、投資家から集めた資金の運用方針や運用報酬を決め、投資家から資金を調達します。運用会社が示す運用方針や運用報酬などの条件を書いた書面を「目論見書」といいます。

 投資家が目論見書を読んで投資信託に投資することを決めた場合、投資信託の販売会社(銀行や証券会社)から、1口単位で投資信託証券を購入します。

 運用会社では、投資家から集めた資金を、目論見書で開示した運用方針に沿って、株やREIT、債券などの証券で運用します。

 投資家から集めた資金で運用されるこれらの証券資産は、そのときどきの個々の証券の市場価格の合計で資産全体の価値が決まります。これを販売した口数で割ったものが、1口あたりの資産価格となります。この1口あたりの資産価格を「基準価額」といいます。このため、基準価額は投資信託保有する証券の時価によって日々変動します。

 オープン型投資信託の場合、投資家は、投資信託証券を、販売会社を通じて基準価額で売買できます。1口単位で売買できるので、少額から分散投資をすることができ、個人投資家にとってはとても便利な金融商品となっています。

 なお、投資信託には、購入費用と運用費用が発生します。

 購入費用が1%の投資信託を10,000円分購入する場合、1%にあたる100円は販売コストとして差し引かれ、9,900円で購入できる口数を購入することとなります。

 運用費用の内訳については、年率〇%として目論見書で必ず開示しています。ここで開示された運用費用は、運用する資産から毎日1日分が差し引かれ、その後に口数で割って日々の基準価額が決まります。

 投資家から集めてきた資金を、日経225平均を構成する企業の株に、時価総額の割合に応じた割合で保有するよう、日々売買する投資信託を作ったとします。この投資信託の基準価額は日経225平均とほぼ同じ値動きをします。このような投資信託を、インデックス指数連動投資信託(またはインデックスファンド)といいます。日経平均に限らず、スタンダードプアーズやダウ工業株30種、NASDAQなどに連動する投信もあります。

 インデックスファンドは、ファンドを構成する銘柄が時価総額の割合に応じた株数になるよう機械的に売買すればよいので、投資のプロに支払う費用が不要です。このため、非常に運用費用が安く、多くが販売費用0、運用費用年率1%未満で提供されています。このため、長期にわたって常にファンド運用成績の上位にきます(トップではない、上位=リターンがプラスというわけでもない)。

 インデックスファンドは、経済成長に着実に連動するという面において、個人投資家にお勧めの金融商品といえます。 

 投資信託は「資産の福袋」なので、多くの種類が存在し、販売会社を通じて購入できます。株に投資するもの、債券に投資するもの、REITに投信するもの、商品先物価格に投資するもの、これらを一定の割合でブレンドしたもの、よりどりみどりです。

ETF

 ETFは「上場投資信託」です。つまり、投資信託です。

 オープン型投資信託が販売会社を通じて基準価額で売買できるのに対し、ETFは株式市場に「上場」されているので、市場の取引価格で売買することになります。

 ETF投資信託ですので、日々基準価格が算出され、WEBなどで公開されています。実際はこの基準価格に近い金額で市場で売買することになりますが、ときに値が大きく動く局面では基準価格と市場価格が乖離することもあります。

 ETFは市場で手軽に売買できる商品として人気です。

 各国の株価指数に連動するもの、REITREIT指数に連動するもの、株やREITのグローバル指数に連動するもの、石油や金の市場価格に連動するもの、さまざまですが、基本的には何かの指数や価格に連動する商品がほとんどです。

 このため、運用費が非常に低く、個人投資家にとっても扱いやすい金融商品となっています。ちなみに、売買方法は個別銘柄株と同じですので、購入費用は証券会社に支払う取引手数料のみとなります。

 

 

 

 

 

 

日本のバブル崩壊(1990年1月~)

日本のバブルの概要

 1980年代後半~1991年頃に狂乱を招いた日本の好況期は、拡大期も崩壊期もあまりにも長期にわたって日本の経済に影響を与えた。経済のみならず、文化、社会、国民気質、風俗にも大きな影響を与えた。このため、国内で「バブル」とか「バブル時代」といえばこの時代のバブルのことを指している。

 日経平均の価格推移を見てみると、1982年から顕著に上げ基調となり、1989年の大納会で記録した38,957円がピークとなった。このときの日経平均株価は30年以上が経過した2020年5月現在においても未だ回復していない。

 また、1970年代、1980年代は米国株に比べて日本株のパフォーマンスがはるかによかったが、バブル崩壊後を契機として完全に逆転。1990年代以降2020年現在に至るまで、米国株の方が日本株よりもはるかにパフォーマンスが良い(年代別の運用シミュレーション参照)。

 

 バブル拡大期の株価の推移

 日経平均の上昇傾向の始まりと合わせて1982年7月~1989年12月を拡大期とし、グラフ化した。この間7年強で日経平均は5.5倍となった。7年以上にわたり、福利ベースで平均25%成長したことになる。

 

 1985年9月のプラザ合意後、円高ドル安が顕著になっており、1985年の9月に240円前後であったドルは1989年12月は140円台と40%も下落している。

 プラザ合意後の円高不況対策として日銀は金融緩和を継続。これが過剰流動を招き、不動産、株などの資産へ資金が流入。バブルがふくらんだといわれている。

 プラザ合意後、日経平均とスタンダードプアーズの伸びが顕著に乖離しているが、これは円換算しているためでもある。ドルベースではこの間も成長を続けている。

 

 バブル拡大期は今では考えられないような狂乱となり、人々の生活、行動様式に大きな影響を与えた。

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日本のバブル拡大期

シミュレーション期間

 1982年7月~1989年12月(7年5か月)

 

 ※)日本のバブルが拡大していく期間

 

グラフにおけるそれぞれの資産価値の推移

・月末の終値でのみ評価。

 日足ではない。

・米国の株価指数は月々の為替レートで円換算。

 ドル評価ではない。

 

シミュレーション期間における各指数のリターン

 日経平均: 5.5倍(年利回り25%)

 スタンダードプアーズ500: 1.8倍(年利回り8.2%)

 

バブルがはじけた後の株価の推移

 日経平均株価のピークは1989年末であったが、日本銀行は1990年、不動産バブルを鎮静化させるために引き締め策をとった。その結果、不動産バブルがはじけ、日経平均はますます値を下げた。景気が悪化する中1991年まで引き締めを続け、さらに景気を悪化させた。

 1989年12月~1992年7月の2年7か月で日経平均は59.1%下落した。

 その後、国内は大不景気へと突入。不動産価格も下落。債務返済の源泉が土地の値上がり前提であったため、債務者は負債を返済できなくなった。同時に不動産も軒並み担保割れとなり、銀行は大量の不良債権を抱えることとなる。

 1995年~2000年、就職氷河期

 1997年11月、山一證券破綻。

 1993年以降、アベノミクスが始まる2013年までの間は失われた20年といわれる。1990年後半、米国がITバブルを謳歌するのを横目に、日本経済はさえなかった。バブル崩壊の不況から立ち直れないままの状態で2000年代の世界経済不況へと巻き込まれていった。

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日本のバブル崩壊

シミュレーション期間

 1989年12月~1994年12月(5年)

 

 ※)日本のバブルが崩壊していく期間

 

グラフにおけるそれぞれの資産価値の推移

・月末の終値でのみ評価。

 日足ではない。

・米国の株価指数は月々の為替レートで円換算。

 ドル評価ではない。

シミュレーション期間における各指数のリターン

 日経平均: 0.51倍(年利回り-13%)

 スタンダードプアーズ500: 0.89倍(年利回り-2.3%)

 

ITバブルの崩壊(2000年2月~)

ITバブルの概要

 別名ドットコムバブル。

 バブルがふくらみはじめたのは1995年春頃から?NASDAQが他の米国株価指数と比べて顕著に値上がりをはじめるのは1998年秋頃から。バブルがはじけたのは2000年春頃から。

 インターネットの急速な発展に伴い、IT関連ベンチャーに資金が集中。新興市場の株価を押し上げた。その後、実体のない新興企業が資金を食いつぶして次々と倒産しはじめ、バブルがはじけた。

 NASDAQが2000年2月をピークに大きく値を下げ始めるものの、ダウ・ジョーンズ工業株30種、スタンダード・プアーズ500は2001年8月まで大きく値を下げることなく、むしろ上昇している。ITバブルの影響を直接受けたのはNASDAQのみだったのかもしれない。

 その後、2001年9月に米国同時多発テロが発生。米国本土が攻撃されるという衝撃的なテロ事件であったが、米国株価や世界経済への影響はさほどではなかった。

 ITバブル崩壊後、経済への影響が大きかったのは2001年12月のエンロン破綻である。複雑なデリバティブを駆使して粉飾決算を行い、経営の実体を隠蔽。破綻時の被害を拡大した。破綻時の負債総額がいくらになるのかすらよくわかっていない。最低310億ドルとのことで、当時としては史上最大であった。その後の調査で大手会計事務所アーサー・アンダーセン粉飾決算への関与が判明。企業会計への信頼が揺らいだ結果、2002年3月よりアメリカ株は下落基調となった。

 そのショックがさめない2002年7月、米国通信事業者大手のワールドコムが破綻。負債総額410億ドルでエンロンの破綻負債総額を半年で更新。ここでも粉飾決算が明るみに出た。ダウ30、スタンダードプアーズ500は企業会計不信が表面化した2002年3月から2002年9月の半年で30%以上下落した。

 NASDAQのITバブル崩壊前への株価回復が見え始めた2007年夏にリーマンショック(サブプライムローン危機)が発生。2000年代は金融危機や不安が連鎖発生して株式投資家苦難の10年となった。

 上のような状況であるため、どこまでがITバブルの影響なのかわかりづらくなっているところがあるが、この記事ではNASDAQのピークである2000年2月からリーマンショックによる下落がはじまる2007年5月の7年3か月間をバブル崩壊~回復の期間としてシミュレーションした。

 この一連の期間、日本はバブル崩壊後の「失われた20年」にあたる。米国株がバブルを謳歌する一方で、日経平均株価は低迷。バブル拡大期では一切株価が上がらなかったのに、その後の不景気の影響はしっかり受けていた。

 

バブル拡大期の株価の動き

 日本経済がバブルの後始末に苦戦する中、米国株は1995年4月頃から上昇基調に。NASDAQ指数の値はITバブルのピークとなる2000年2月までの5年弱もの間、複利ベースの年利回り50%で伸びた。

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ITバブル拡大期

シミュレーション期間

 1995年4月~2000年2月(4年10か月)

 

 ※)ITバブルが拡大していく期間

 

グラフにおけるそれぞれの資産価値の推移

・月末の終値でのみ評価。

 日足ではない。

・米国の株価指数は月々の為替レートで円換算。

 ドル評価ではない。

 

シミュレーション期間における各指数のリターン

 NASDAQ: 7.1倍(年利回り50%)

 スタンダードプアーズ500: 3.4倍(年利回り29%)

 ダウ工業株30種:3.0倍(年利回り26%)

 日経225平均: 1.2倍(年利回り3.8%)

 

※)利回りは複利ベースで算出

 

ITバブル崩壊後の値動き

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ITバブル発生後

シミュレーション期間

 2000年2月~2007年5月(7年3か月)

 

 ※)ITバブルが崩壊してからリーマンショック

   始まる直前までの期間

 

グラフにおけるそれぞれの資産価値の推移

・月末の終値でのみ評価。

 日足ではない。

・米国の株価指数は月々の為替レートで円換算。

 ドル評価ではない。

 

シミュレーション期間における各指数のリターン

 NASDAQ: 0.61倍(利回り-6.6%)

 スタンダードプアーズ500: 1.2倍(利回り2.5%)

 ダウ工業株30種:1.5倍(利回り5.6%)

 日経225平均: 0.9倍(利回り-1.4%)

 

※)利回りは複利ベースで算出

 

シミュレーション期間内最大下落率

 NASDAQ: 2000年2月~2002年9月の2年7か月で72.4%下落

 スタンダードプアーズ: 2000年8月~2002年9月の2年1か月で38.7%下落

 ダウ工業株30種: 2002年3月~2002年9月の2年1か月で33.0%下落

 日経225平均: 2000年3月~2003年4月の3年1か月で61.5%下落